回廊


回廊は、宗教的共同体の為だけの用に供し、禁欲的生活の中心をなした。一般に身廊の側廊の一つに沿って置かた(ほとんどの場合、南側の側廊)。そこは、黙想と寛ぎの場であり、修道僧が日々使用した様々な建物(僧会堂、 寄宿舎、 写字室、食堂、貯蔵室、台所等)への通路であった。そこでは、洗足の様な、特定の儀式も行われたかもしれない.その矩形或いは台形の形態はローマの住宅で見られ、後に古代末期のバシリカに組み込まれたアトリムに由来した。この中世の回廊とローマのアトリウムの関係は、特に、ミラノのサン・ロレンソ のアトリウム(それは、2つの前室に置かれた階段を経由して至る側に沿った、小さな部屋を持つ) で明白に現れている。

その11世紀の回廊は、全体的に、彫刻では装飾されていない(いくつかは、様式化された植物のモティーフのある柱頭を持ってはいるものの)。それらは、全体的に変形したプランであり、石柱に載った半円のバレルヴォールトの4つのアーケードが架けられたギャラリーがある。トゥルニュ のサン・フィルベールの回廊(1050年)は、より複雑な構成(二つの面の小柱に挟まれた柱を持つ)をみせる。ブザンソンの大聖堂の回廊(l050−1060年)と恐らくSaint-Guilhem-le-Desertのそれ( l060−l070年 )は、細い小柱と四角形の柱が交互に配置されている。

12世紀になってやっと、彫刻が回廊を柱頭と柱で覆い始めた。モアサックの大修道院には、(1100年に遡る)原型が保たれた最も古い彫刻された人物像の装飾を持つ回廊の例がある。そこには、交互に配置された単一のそしてペアの大理石の小柱に載るアーケードを抜けて、中央の空間に開いた4つの屋根が架けられたギャラリーがある。4つのコーナーとそれぞれの面の中央には、四角形の柱が立っている。この回廊の素晴らしい独創性は、正にこれらのれんが柱 (それらは、アーケードの下に描かれた12使徒の像が浅浮彫りで彫刻された大理石の石板に面している ) である。その作品は、象牙の額と貴金属品の一例が、魅力的である。象形模様の装飾を施した柱頭は、旧約聖書、ヨハネの黙示録の場面そして聖人の人生を表現している。

かなりの進歩が、ツールーズの La Daurade の小修道院の柱頭に見られる。モアサックのものとは対照的に、それらは、単独の場面ではなく、連続的な物語を表現している。 ;これの場合、それらは、彩色された聖書(そこでは、ある物語が数ページに渡って表されれている)を思わせる。ヘロナ、Sant Cugat del Valles そしてタラゴナの回廊を証人となる、物語の連続は、 12 世紀に熱烈に採用された。

調和のとれた回廊

Sant Cugat del Valles 、回廊。12世紀末。4 つのギャラリーの形は、一辺30mの正方形である。それらには、切石の半円形のバレルヴォールトが架けられている。それぞれのギャラリーが、 (彫刻された柱頭を持つツインコラムに置かれた)5つのアーケードの3つのセクションを構成している 。
後期の回廊

Saint Trophime。アルル。回廊。12世紀の最後の三半世紀。その回廊は、 2 つのロマネスク様式と2つのゴシック様式のギャラリーを持っている。それらのアーケードは、彫刻された柱頭を持つツインコラムに載っている。
歴史的価値ある柱頭

Sant Cugat del Valles 、回廊内の柱頭の詳細。その柱頭は、逆角錐の形をしている。それらのコーナは小さな塔で装飾されている(それらの各々には花弁形のタイルの円錐形の屋根がある) 。これらの下では、受胎告知が表現されている。
石の刺繍

サン・ピエール。モアサック。回廊の柱頭の詳細。1100年頃。その柱頭は、粗削り立方体であり、その表面全体が葉と葉飾りのついた渦巻きで覆われている。(浮彫り)の下はくりぬかれておらず、殆どくっついている。残っている全てのロマネスク様式の回廊のうちで、モアサックのものは、大部分の豊かに装飾された部分が残る代表作の1つである。
最も古い象形模様の装飾が施された回廊

サン・ピエール。モアサック。回廊。1100年頃 。4 つのギャラリーは、シングル或いはダブルの小柱を交互に載せたアーケードを経て、広い回廊型中庭に開いている。量感のある柱が、各コーナーと、それぞれのアーケードの中程に立っている。この回廊の彫刻された装飾は、最も古い象形模様の装飾がほどこされた連続体であり、象牙と金細工の影響が見られる。
優れた中世のファサード

ノートルダム。 ル・ピュイ・アン・ブレー。回廊。12 世紀後半。大聖堂の北側廊に隣接する、その回廊は、矩形プランである。4 つのギャラリーには、グロインヴォールトが架けられている。回廊型中庭に開くアーケードは、付け柱に挟まれた支持材の載っている柱頭の豊かな彫刻装飾は、壁面の優れた多彩色石細工に似合っている。
堅牢な回廊のギャラリー

前大聖堂。Sainte-Eulalie 。エルヌ。ルーシヨン。12 世紀。その回廊は、不等辺四角形の形状をしている。;石材のヴォールトは交差リブに載せられている。各ギャラリーは、ピアによって分轄された三つのアーケードの四つのセクションからなり、彫刻された柱頭を持つツインコラムによって支持されている。

参照

THE ROMANESQUE
Towns,Cathedrals And Monasteries
XAVIER BARRAL ALTET
第3章

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