用語集
Abbasids/アッバース朝:
カリフ(→Caliph)の二番目の王朝(750年にダマスカスのウマイヤ朝(→Omayyad)のカリフ国を引き継いだ)。その威信は、10世紀末に衰え始めが、最終的に、モンゴル族が最後のアッバース朝のカリフを1258年に殺害するまで、消滅はしなかった。
Ablaq/アブラク :
黒色と白色或いは暗色と明色の石材の層或いはアーチ石を交互に配置すること基づく装飾のシステム。
Abraham/アブラハム :
ユダヤ民族の創始者としてトーラーと聖書の中で崇拝されている、彼は、彼の息子イザックとイスマエルを通じてユダヤ民族と民族の先祖であると考えられている。ムスリムにとって、彼は、「神の友人」であり、メッカでカーバ神殿を建設したと考えられている。
Arcade/アーケード :
一連の柱、ピア(窓間柱:訳注)、或いはコラムに載るアーチから成る建築のエレメント。アーケードは、ポルティコ(柱廊)(→portico)を形成することがある。
Ayyubids/アイユーブ朝:
サラッディーンとして有名な、クルド・サラ・エッディンによって創設された独立したイスラムの王朝。それは、1171年から1260年まで、シリア全体、上メソポタミア、エジプト、イエメン、そして聖なる都市メッカとメディナを統治した。
Bagratids/バグラト朝:
885年から1079年まで、アルメニアを統治した先住の王朝。
Basileus/バシレウス(複数形basileis) :
650年以降、ビザンチンの支配者によって継がれたギリシアの王、或いは皇帝の称号。
Bay/ベイ:
屋根のある空間の内部の横方向のユニット、2つのコラムの間のスペース。ベイは、(縦方向の空間のユニットである)身廊(→nave)と対照をなしている。
Beit/ベイト:
「家」を意味するアラビア語。
Caliph/カリフ :
予言者の後継者の系譜にあるイスラーム共同体の長。カリフは、「信者の指揮官」である。トルコのスルタンは、(マムルーク朝下のエジプトを1517年に征服した)セリム一世の治世の間にカリフの称号を獲得した。
Cami (Camii) /ジャミ:
「集めるもの」を意味し、会衆のモスクを指す、アラビアの言葉jami(ジャミ)に由来するトルコ語。
Caravanserai/キャラバンサライ:
ムスリム諸国内の、商取引或いは巡礼ルートにある防備が固められた中間立ち寄り所。セルジューク朝とオスマン王朝のキャラバンサライは、ラクダキャラバン(一日に約25kmから30kmを走った)の立ち寄り所の印となった。
Circumambulation/巡行:
宗教慣例:崇拝と信心深さの印として、神聖な場所の周囲を歩くこと。イスラームにおいて、その実践は特に、メッカのカーバ神殿(→Kaaba)、そして有力者或いは聖者が奉られた霊廟と、結びついている。
Cyma recta/サイマ・レクタ:
二重のカーブ(上部が凹面で、下部が凸面)からなる古代のモールディング。
Danishmendites/ダーニシュメンド朝:
アナトリア北西部で独自のエミール国を形成したトルクメンの種族。それは、11世紀末から1178年まで統治し、スルタン・クルチ・アルスラン二世によって倒された。
Depressed arch/ディプレスド・アーチ(偏平アーチ):
四心アーチを見よ(→Four-centred arch)。
Dervishes/ダルウィーシュ(修行者):
神秘的法を旨とした、托鉢、或いはその他のイスラム教の修道士。
Dikka/ディッカ:
モスクの中の一段高い舞台(そこから司祭者が礼拝者を導く) 。
Divan/ディヴァン:
支配者の会議を意味するペルシア語。
Emir/エミール:
軍指令官、後に行政区の知事を指すアラビアの称号。
Four-centred arch/4心アーチ:
迫石(ブソアー)(→voussoirs)の継目を、四つの円の半径を形成する、4点に纏めるように、造られたポインテッドアーチ。その形は、ボートの先が上を向いた艇体と似ている;相当するヴォールトは、時折、キールヴォールトと呼ばれる。
Ghazi/ガジ:
イスラム教徒の戦士 :不信心者と戦うムスリムを云うアラビアの言葉。トルコでは、勝利を得た戦士に贈られる称号。
Ghaznevids/カズナ朝 :
10世紀と11世紀のアフガニスタンとパンジャブを統治した、トルコ族の王朝。
Hammam/ハンマーン(トルコ語のハマヌ) :
ローマのモデルに従った(冷浴、温浴、そして熱浴室を持つ)公共或いは私設の浴場。トルコ式浴場の専門は、非常に熱い蒸し風呂である。
Han/ハン:
カーン(→khan)とキャラバンサライ。
Haram/ハラン:
モスクの聖別されたエリア。そこで、祈りの言葉が捧げられ、儀式が行われる。一般的には、礼拝堂;聖なるエリア全体を含むことがある。
Hegira/ヘジラ(ヒジュラ):
文字通りに、ムハンマドの「国外追放」。その時、彼は、ヤスリブ(そこは、予言者の町(メディナ・アル・ナビ)、メディナとなった)を離れた。この出来事は、622年に起こり、そして、イスラーム時代の始まりを示す。
Hypostyle hall/多柱式ホール:
多くの通路とベイを形成するコラム(丸柱)とピラー(角柱)の列によって支えられた屋根を持つホール。
Imam/イマーム :
礼拝儀式の指導者を意味するアラビア語(文字通り「前に立つ人」)。シーア派にとって、イマームは、宗教的共同体の指導者であり、イスラームの伝統の相続者であり、予言者の教示の通訳者である。
Imaret/イマレト(巡礼者の宿舎):
貧しい者ののための食堂或いは給食施設。イマレトはしばしば、キュッリイェ(→kulliye)の一部として見られる。
Intrados/イントラドス:
アーチ或いは迫石(→voussoir)の、下部或いは内側の曲面。
Iwan/イワーン:
巨大なニッチの形をしたヴォールト状の建築的空間。それは、通常、中庭に対して開いている;それは、平滑な枠で囲まれている。その形態は、ペルシア起源である。
Jihad/ジハード(聖戦):
不信心者に対して行われた「聖戦」を意味するアラビア語。
Kaaba/カーバ神殿:
メッカのイスラームの聖なる中心施設。伝承によれば、そこの黒石は、アブラハム(→Abraham)によって建立された聖所で崇拝されている。それは、(全ての宗教の教えを実践しているムスリムが、少なくとも、一生で一度は実行しなければならない)コーランによって義務づけられた巡礼或いはハジュ(hajj)の目的地である。
Karamanid/カラマン朝:
コンヤ地域に13世紀に設立されたアナトリアのトルコマン人(トルコ人ではない:訳注)の王朝。それは、オスマン族によって征服された。
Keystone/キーストーン(要石):
通常くさび形のアーチの頂点にある石材。
Khan/カーン(或いはハンhan):キャラバンサライ、或いは町の中にある、小売商人が商品を安全に預けることのできる倉庫。
Khanqah/カンクァ:
イスラームの修道院を意味するアラビア名。修道士は、通常、托鉢修道士(しかし兵士になる可能性のある)であった。
Kiosk/キオスク :
トルコのキョシュクに由来する、四方が開け放たれ、木材の様な軽い素材で造られた、娯楽用の四阿(pavillion)を指す。
Koran/コーラン :
文字通りに、「日課の復唱」:イスラームの聖典(予言者ムハンマドの教示が記載されている) 。
Kulliye/キュッリイェ:
モスクの周囲に配置された慈善基金で創設された建物の複合体を意味するトルコ語。それは、通常一つ以上のマドラサ(→madrasas)、病院‐診療所、カンクァkhangah(修道院)、精神病者のための保護施設、沐浴のための泉(→シャドゥルヴァン)そしてチュルベ(墓)から成る。
Kumbet/キュンベト:
チュルベと同義語。
Lantern tower/ランタンタワー (光塔):
窓が穿たれた小さな塔。それは、ドーム或いは屋根に冠し、光を内部に取り込むことを可能にする。
Limes/リメス:
ローマ帝国の防備を固められた国境のために使われる「境界線」を意味するラテン語。
Loggia/ロッジア(涼み廊下):オープンギャラリー、或いはアーケード ;そのスルタンが儀式を見たボックス席。
Madrasa/マドラサ:
スンニ派(→Sunni)のコーランの学校。一般的に、イワーン(→iwan)を持つ伝統的なペルシアの中庭モスクの形式で造られる。トルコ人は、シーア派(→Shiite)の教義に影響を受けた地域をスンニ派イスラームに戻そうとして、多くのマドラサを建設した。
Mamluks/マムルーク:
しばしばトルコ出身の軍人奴隷。そして彼らは、エジプトとインドで権力を握り、強大な帝国を創設した。
Mihrab/ミフラーブ :
半円のヴォールトに覆われ、キブラ壁(→qibla)に配されたアーチが前にあるニッチ。それは、メッカの方向(礼拝のためにムスリムはその方角に向く)を示す。
Minaret/ミナレット:
頂上からムアッジン(→muezzin)が、日に五度の礼拝の呼びかけをする、高い塔。
Minbar(mimber, minber)/ミンバル:
その説教師が、モスクの中で信徒に話しかける、ミフラーブの右側にある、段状の説教壇。
Muezzin/ムアッジン:
ミナレットの頂上からイスラームの礼拝者のに向けた呼びかけを詠唱する者。彼が叫ぶ言葉は、以下の通りである。:「アッラーは、誠に偉大なり。私は、アラーより他の神なしと証言する。私は、ムハンマドが神の使者であると証言する。祈りに来なさい。魂の救済に来なさい。」最初の礼拝時報係は、Bilal(両性具有者?:訳注)であると言われている。
Muqarna/ムカルナ:
建物のコーベル(持出し)を装飾するスタラクタイト。これらのハチの巣状のヴォールトは、次第に、構造的機能を持つことを止めていった。
Nave/身廊:
神殿、モスク或いは教会の中央の区域を走る縦方向の主空間。
Oculus/オクルス:
ドームの頂点にある円形の開口部。
Omayyad/ウマイヤ朝:
預言の後継と云われる、最初のカリフ(→Caliph)たち(メディナの者たち)を継承した、イスラームのアラビアの王朝。ダマスカスで設立された、それは、660年にムーアウィアによって創設され、近東で750年に終焉を告げた。ムーア人のスペイン (それは、そこで、756年から支配した)において、1031年までそれは、存続した。
Osmanli/オスマンル族:
オスマン王朝の一員。オスマンル族は、オスマンの種族である。
Ottomans/オスマン朝:
オスマン一世によって13世紀に創設されたトルコのスルタンの王朝。それは、広大な帝国を統治し、先の1922年に終焉した(16世紀と17世紀にその権力の極致に達した)。
Pendentive/ペンデンティブ:
正方形のプランと円形の基部或いはドームの円筒部の間を連結部を形成する凹面の球形の三角形を示す建築用語。スキンチ(→squinch)とは、区別される。
Peribolus/ペリボルス:
(ギリシア語)神殿を囲む聖別されたエリア。
Pishtaq/ピシタク:
広いフレームとイワーン(→iwan)の形をしたニッチを持つポータル(門)指すペルシア語。モスク、マドラサ(→madrasas)、カンクァ(→khanqahs)、そしてキャラバンサライ(→caravanserais)への入口に見られる。
Portico/ポルティコ(柱廊玄関):
ファサード或いは被いのある空間の内部を支える荷重耐力部位(角柱と丸柱)から成る構造物。ポルティコは、アーキトレーヴ或いはアーチのいずれかを持つことがある;後者ならば、それは、アーケード(→arcade)と呼ばれる。
Qibla (kible)/キブラ壁:モスクとメッカを結ぶ線に直角に立つモスクの壁。それは、 ミフラーブ(→mihrab)と呼ばれる壁がんを包含している。礼拝時に、ムスリムは、キブラの方に向かった頭を垂れる。
Rum (Selsuks)/ルーム(セルジューク):
ルームは、ルミ(Rumi)或いはローマ人(ここではビザンティン人を意味する)、に帰すルーム・セルジューク帝国(1073-1308)
は、アナトリアを包含し、ボスフォラス海峡の北岸に向け、そして、西ヨーロッパ内部に拡大した。
Sadirvan、sebil/シャドゥルヴァン :
儀式的沐浴のために使用されるモスクの中庭にある泉。水は、それに求める人々に無料で配布された。
Safavids/サファヴィー朝:
シーア派の王朝(1502年と1736年の間にペルシアを統治した)。シャー・タフマースブ一世の治下、それは、メソポタミアをオスマン朝のスルタンに譲渡した。しかし、シャー・アッバス大王は、ペルシアの帝権を奪還した。
Samanids/サーマーン朝:
874年と999年の間、ペルシアとトランソキシアナを統治したイランのイスラームの王朝。それは、ホラーサーンとセイスタンを含んだ
;その首都は、ボハラであった。
Sassanids/ササン朝:
ペルシアの王朝で、ロマノ・ビザンティンの主要なライバル。それは、224年から651年に、メソポタミアからインダス川に及ぶ帝国全土を統治した。それは、7世紀半頃、アラブ種族の稲妻のような進出によって破壊された。
Scotia/スコティア(凹所):
古代の柱の基壇にある二つのトーラス(大玉縁:訳注)の間の凹面のモールディング。
Scriptorium/ 写字室(複数形scriptoria):
写本を写す為に当てられた、修道院の中のスペース。
Selamlik/シラミリク(男部屋):
オスマン王朝の住居或いは宮殿の男性の為の区域。
Selsuks/セルジューク朝:
トルコ族の中央アジア起源のこのスルタンの王朝は、11世紀と12世紀に、イランとイラク全土を統治した。セルジューク族は、バグダッドを1055年に占領し、1071年にマンジケルトでビザンティンを敗った(次第にアナトリアを占領し)。それ以降、イランの大セルジューク族は、小アジアのルーム・セルジューク族(→Rum Selcuks)と区別される。
Seraglio/セラグリオ:
スルタンの宮殿。
Shiites/シーア派:
預言者の娘ファーティマの夫アリによって象徴される伝統に忠実なイスラームの宗派(彼らは、彼が直系によってカリフ国を継承したと考える)。
Spandrel/スパンドレル:
アーチの側面とその直線のフレームの間の三角のスペース ;アーケード(→arcade)の中の二つのアーチの間の面と隣接するリブの間のヴォールトの面にも適用される。特にミフラーブ(→mihrab)の周囲で、このエリアは、しばしば装飾されている。
Spolia/スポリア:
( ラテン語:「スポイルスspoils。略奪する。」) 再利用された古代の建物の部位。
Squinch/スキンチ:
対角線上に置かれ、凸角をヴォールト状にする、小さな対角ヴォールト。ドームを載せた四つのスキンチは、正方形の開口部を八角形に変える。それらは、そのようにして、ドームの円形のベースを、正方形の開口部に載せることを可能にしている。
Stalactites/スタラクタイト:
ムカルナ(→muqarna)を見よ。
Stereotomy/切石法:
建物が作られる石材をカットする技術。
Sunni/スンニー派:
(共に、イスラームの伝統を形成する )コーランとハディス(預言者の説話)によって構成された法である、スンナで成立されられたイスラーム正統派。スンニー派は、(神が行うと考える)シーア派と対照的に、人がイマーム(→imam)を選任すると考える。
Tekke (tekkiye)/テッケ:
カンクァ(→khanqah)に相当するトルコ語。
Temenos/テメノス:
「神にささげられた一片の土地」を意味するギリシア語。特別に、神殿の区域を指す。
Torus/トーラス(複数形tori):
古代コラムのベース(基壇)の凸状のモールディング。
Tunnel vault/トンネルヴォールト:
半円形の外形をしたヴォールト。
Turbe/チュルベ:
霊廟を意味するトルコ語。これは、一般的に、葬式用の部屋を包含し、高い円錐形の屋根に覆われた、円形、八角形、或いは多角形の建物である。
Turkish pleats/トルコ襞:
(特にブルサの)第一線級のオスマン朝の建築家たちに原型を持つ建築方式。それは、正方形の平面とドームの間の幾何学の推移の構成要素となっており、突き出した三角形状の襞から、構成されている。それは、一般に、ペンデンティブ(→pendentive)とスキンチ(→squinch)によって実現された効果を演出した。
Turkish triangle/トルコの三角形 :
正方形の建物の平面と円形のベース或いはドームのドラムの間の接合部の一形態。それは、建物の四つのコーナーの直線状の三角形の面(凹面ではない)を形成しており、ペンデンティブとスキンチに替えている。
Tympanum/ティンパヌム:
扉のまぐさと上に載ったアーチの間の垂直面 ;アーチ或いはペディメントの中を埋める壁のエリア。
Voussoirs/ブーソア(迫石):
要石の両側にあるアーチの構造を形成するくさび形の石。
Wali/ワリ:
オスマン朝の地方の総督。
Yali/ヤリ:
海辺に材木で建てられたトルコ人の別荘(応接室が沿岸に突き出していることもある)。