Mihrab/ミフラーブ
メッカのカーバの神殿の方向に面するキブラ壁の内側に埋め込まれたアーチ型のニッチ。ミフラーブはキブラの表象であるとも言え、モスクの中で最も神聖な聖域を形成する。その初源はムハンマドの没後とされている(ムハンマドの生前には、キブラは単に槍を立てて示されてと言われており、モスクの原型とされるムハンマドの家にもミフラーブはない)。また形態の起原については、キリスト教の教会のアプスや、仏教寺院の仏像を置く龕にそれを求める説もあるが、ユダヤ教のシナゴーグのトーラ・ニッチ(聖典を置く壁龕)を原型とする説も有力である。その語源は、古代アラビア語に求める学者もいるが、諸説あり定まってはいない。建築的には、ミフラーブは単なる目印ではなく、次第にモスクの中核的エレメントとして意味を帯び、それを中心とする区域は、モスク中で最も壮麗な場所となった。それ故に、ミフラーブはそれが造られた地域の風土・分化的特徴、時代背景、国力を最も良く示していると言える。
現在のダマスクスのウマイヤ・モスクのミフラブ/出典:Islam vol.1 Taschen
ドュラ・ユーロポスのシナゴークのプラン(左)とトーラ・ニッチ(右)。紀元3世紀。/出典:Islam vol.1 Taschen

05/05/25
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