Muqarnas/ムカルナス
ニッチとニッチの断片の複合体から成る蜂の巣状の装飾モティーフで全体として凹状の曲面を造りだす。ムカルナスという言葉は、アラビア語、ペルシャ語、トルコ語で使われ、英語ではスタラクタイト(stalactite:鍾乳石)、ハニカム・ヴォールト(honeycomb vault:蜂の巣状ヴォールト)、フランス語では(アルヴェオル(alvéole):蜂の巣の房)と表現される。
その語源には、ギリシャ語のコーニス(軒蛇腹)、アラビア語のカルナス(手の込んだ仕事)、中世アラビア語文字配列のqrnsの持つ意味の一つ(突き出した崖)、などもあげられているが定説はない。
形態的な起原についは、9世紀のニシャプールや11世紀のフスタートの浴場で使われた類似形の陶片、と10世紀初頭とされるイスハファンのスキンチ・アーチにその片鱗が見られるとされているが、その後の展開を考えると、ドームとその支持材の間の移行部でスキンチとして使われたものの曲面が分解し発展して行ったと考える方が、自然で在る様に考えられる。その形状は11世紀の東域イスラムでドームの内面全体を覆い、イーワーン、ミフラーブのニッチ、開口部の頂部などに使われ、さらに装飾としてしての独立性を高めていった。12世紀後半には、ダマスカスやモロッコのフェスにも伝播し、イスラム建築を形成する主要なエレメントの一つとなる。

1154年に着工したダマスカスのマリスターン・アル・ヌーリー。内面は 幾何学的なスタラクタイトに覆われている。/図版出典:Islam vol.1 Taschen




05/05/25

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