ちょっと似すぎpart4/改めクリュニー修道院とイスラム文化 part6

ちょっと似すぎ!?part3の続きですが、part1で紹介した、英国のノーフォークにあるキャスル・エーカー小修道院を調べていたところ、気になる文面がありました。
Castle-Acre-Castle-Priory.htmlというホームページに記述されていた以下の文章です。

「1077年に、彼(サリー伯ウィリアム・ド・ウァレン:訳注)と彼の妻グンドレダ(Gundrada)は、ブルゴーニュ地方のクリュニー修道院を訪れ、直ぐさま、その美しさとそこの教団に感銘を受けた。Lanfranc(ランゾー?)に相談した後、彼は、英国で最初のクリューニーの宗教建築を建てることを決断した。この事業は直ぐにルイス(Lewes in Sussex:訳注/本文中のLewisはLewes)で始められ、彼の城のすぐ近くの、セント・パンクラス(St Pancreas)小修道院(現存していない)は、海峡のこちら側での、最初のクリューニーの建物になった。彼はまた、妻と共にローマに巡礼に出かけるつもりであった。しかし、これは、ローマ法王と皇帝の間の戦争のために中止された。(翻訳)」(彼というのはこの地域の領主、サリー伯ウィリアム・ド・ウァレン(William de Warenne)で、ウィリアム征服王の忠臣であり、且つノルマンディーの征服した一族の出身である、因みにノルマンデー公リチャード一世(仏名:リシャール)豪胆公は彼の大叔父に該る。)

彼は二つの小修道院を建てたが、ここで紹介しているもう一方のキャスル・エーカー小修道院は、出産による彼の妻グンドレダの死(1085年)、抗争による彼の死(1088年)(彼の遺体はルイスの方の小修道院に埋葬された)の後、サリーの伯爵として、父の後を継いだ彼の息子によって建設が引き継がれ(その頃には基礎の部分は出来ていた)、1146-1148年の間に奉納された。(上記の文章からクリューニー教団の英国最初の建物が、サリー伯ウィリアム・ド・ウァレンによって1080年頃から建て始められたことが分かる)※因みにクリュニー3の着工も1080年頃である。

part1でも指摘してきたように、この連続交差アーチは、当時のイスラム支配下のスペインの様式に非常に良く似ている、前述のように、ブルゴーニュ地方のクリューニー修道院の美しさに感動して、これを建てたとすれば、当時のクリューニー修道院の形態がこれに似ていなければ辻褄が合わない。現存するクリューニー3の残存部とは趣を異にする外観であるが、それ以前のクリューニー2(994-1049)の外観が或いはこれに似ていたのかもしれない。未だ類推にすぎないが、英国からブルゴーニュまで行き、さらにローマに行って法王と接見する予定であった実力と資金力をもっていた彼であるから、その建設においても、地場の石工を使ったのではなく(現存する建物の完成度から言っても考えられない)、クリューニー本山から、クリューニー修道院の建設にもあたったマスタービルダー(建築家)を紹介され、正に彼ウイリアムが見たままの外観で建設されたではないかと推測される。我々は、クリューニー3の残存部ではなく、これに当時のクリューニー修道院の姿を求めなくてはならないのでないだろうか?

追補
上記の翻訳文の原典は、12世紀前期のイングランド歴史家マームズベリーのウィリアムの「イングランド司教事蹟(1125年作)で、イングランド最初のクリュニー派ルイスのセント・パンクラス修道院とその初代分院長ランゾーにについて記述されたものの一部である。(岩波新書/修道院/今野国雄著P122-123)
どうやら、この様式は当時のクリュニー派修道院の定番の様式であったようだ。とすれば、ここに現れる連続交差アーチもまた当時のクリュニー修道院建築様式を反映したものに他ならない。そして11世紀から12世紀のノルマン様式といわれる連続交差アーチを持つ建築物は殆どがクリュニー修道院に関わるものである。上記の文章でクリューニー?の建築様式に関して躊躇していたが、少なくともクリューニー?の壁面装飾に連続交差アーチが採用されたいた可能性はかなり高い!のではないだろうか?(2006/02/02)。クリューニー?の残存部(壁面の宗教画や装飾が剥ぎ取られている)やそれを元にした再原図は、規模は巨大であるが、華美な印象はなく、むしろ質素に思えるが、、、、仮に、キャスル・エーカー小修道院の様な壁面装飾が散りばめられていたならば、まさに伝承に残る豪華で華麗な修道院教会であったに違いない。非難に値するほどの異教的な趣さえ漂わせていたことだろう。

関連サイト
Castle-Acre-Castle-Priory.html
Castle Acre Priory
Sussex Past - Museums & Properties - OFFICIAL SITE - Lewes Castle


05/05/27//2006/02/02追記

 

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