ちょっと似すぎ!? part 9



連続交差アーチの起原
様式の伝播

ちょっと似すぎシリーズで取り上げている連続交差アーチのモチーフの起原は何処にあるのだろう?
筆者の知る限りでは、現存する最古の例は、スペインのコルドバのモスク(メスキータ)である。そのモスクの中でも連続交差アーチのモニュメントが現れるのは、ハカム2世時代の961/62年の拡張部にある、ドームのアーチネット、マクスラのアーチ、外壁の門の装飾などに初めて登場し、それ以前の部分には見られない。連続交差アーチのモチーフは他に、スペインの北部のムデハル様式、シチリアのノルマン・アラブ様式や、イギリスとフランスのノルマン様式、そして北アフリカのイスラーム様式にも見られるが、これらは全て、962年以降のもので、特に、スペイン以外で見られるものは、後ウマイヤ朝崩壊以後、1031年以後のものである。筆者がこのシリーズの中で度々スペイン・イスラームの影響を受けたのではないかとして登場させている建築物の根拠はここにある。
但し、コルドバのモスクの連続交差アーチについては、あまりにも完成度が高い技巧的な形状をしている為、現存はしていないものの、これ以前にもっと素朴な形状の試行期の連続交差アーチを持つ建物があったのかもしれない?

コルドバのモスクのドームのアーチネット961/62 コルドバのモスクのマクスラのアーチ961/62 コルドバのモスクの外壁の門961/62
イスラーム様式(スペイン)
スペイン/トレド/サン・クリスト・デ・ラ・ルス San Cristo de la Luz/999・1000
ノルマン様式(英国)
英国/ドーセット州/Christchurch 修道院/11世紀末-12世紀中頃
ノルマン様式(フランス)
フランス/ウール県/Saint-Martin de Chambrais 教会/12世紀末頃
ノルマン・アラブ様式(イタリア)
イタリア/シシリー・パレルモ/モンアーレ大聖堂/12世紀末頃
ムデーハル様式(スペイン)
スペイン/ソリア/サン・ファン・デ・ドィエロ 教会/12世紀末頃
イスラーム様式(マグレブ)
モロッコ/マラケシュ/クッバ・バルディーイーン/12世紀始め(1120)
05/11/14//05/12/23追記 
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