連続交叉アーチの伝播と発展の不思議 (その2)

世界で初めて登場したと目される、連続交叉アーチは、961/962年にコルドバのメスキータ(モスク)に登場した。このアーチは、スペインイスラム教国初代カリフであるアブド・アッラフマーン?の息子ハカム二世が指揮を執り建設されたものとされている。ここでの不思議は、それが対になった双子門であることにある。二つの門は左右対称で全く同一の形状をしている。建築学的には、こういった左右対照の門はそれだけが並んで存在することは稀である。そしてその間には、必ずといって良いほど主役であるモニュメントが存在する。、、、ロマネスク様式やゴシック様式の教会堂建築もしかりである。
予想に違わず、ここでもやはり、双子の門の間には主役たる門が存在する、、、、、がしかし、、、、現存するその門はなんとゴシック様式なのである。おそらくは、それは、16世紀のカルロス5世の時代の改造時(9世紀のアブド・アッラフマーン二世時代の増築部分がゴシック様式の聖堂に改造された)にオリジナルの装飾が剥ぎ取られゴシック様式の装飾が付け加えられたものと考えられる(残念なことに本来の形状は知る事が出来ない、荘厳な門であったろうし、装飾にも重要なメッセージであったに違いないのに、、、、)。イスラームの歴史を抹殺する為の、キリスト教徒の記憶のすり替え行為といえるかもしれないが、、、、実際、両側の双子の門の剛健さに比べるとひ弱な陳腐さを感じざるを得ない。


ハカム二世が建築したコルドバのモスクの増築部にある三つの門。
中央の門では、イスラム期の装飾が剥ぎ取られ、ゴシック様式の装飾が貼り付けられている。

2006/11/07
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