ロマネスク建築用語集(図説世界史7の場合)

アエディクラ
(aedicula、羅)
ローマの小神殿。またはニッチや開口部の額縁としてとりつける小神殿の正面をかたどった装飾。

足高アーチ(Stiltedarch)
上心アーチともいう。アーチの円弧の中心がその起点(起拱点という)をむすぶ線よりも上にあるアーチ。

アーチ(Arch〉
切石や煉瓦を組み合わせて作られる曲線形の梁。



アッティカ式柱礎(Attic base)
正方形の台座の上に、スコティアをはさんで大小各一個のトルスをとりつけた形の礎盤。

アプス(Apse,Apsis独)
一つの建物や部屋に付属して作られる半円またはそれに近い平面の部分。一般にその建物の外側に突出するが、その外形は内部と異なることもあり、天井には通常半ドームをかける。教会堂ではアプスを身廊東端に設けて大祭壇を配置する。シトー修道会の教会堂ではしばしば方形平面のアプスを採用した。

アンテクワイア(Antechoir,Vorchor独)
教会堂において聖歌隊席とアプスとの間の空間。クワイア・スクェアともいう。

ヴォールト(Vault)
アーチの原理を用いて石、煉瓦、コンクリートなどで作られる曲面の屋根または天井。



内輪うちわ(Intrados,Leibung)
アーチ(ヴォールト)の下側の線(面)。

横断型西正面(Transverse west front)
教会堂の西端に、外陣よりも広い幅に作られた長方体状の高大な西正両。

片蓋柱(Pilaster)
柱頭と礎盤をそなえ、壁体やピアと一体的に作られた薄い角柱。ピラスターともいう。

貫通型交差廊(Continuos transept)
外陣の身廊と同じ幅だがそれよりも高く、交差部と袖廊との間にアーケードのない単一空問の交差廊。

教会堂(Church)
教会が典礼の目的に使用するための聖別された建物。堂内は信徒が列席する外陣と聖職者が専用する内陣からなり、大規模な教会堂では外陣と内陣との間に交差廊を設ける。一般に堂内は二列の支柱により三つの細長い空間に分けられ、中央の主要な空間を身廊、その両側に従属する空問を側廊と呼ぶ。しかし支柱のないもの(単廊式)や支柱が一列のもの(二廊式)もある。二列以上の支柱をもつ教会堂は内部空間の形状からバシリカ式と広間式に分類される。



区画型交差部(Tied-off crossing)
教会堂の主屋の身廊と同じ幅と高さの交差廊において、交差部の四周にかけた身廊よりも幅が狭くて低いアーチをうけるため、堂内に著しく突出するL形断面のピアを四隅に設けた交差部。

くり形(Mouldin)
壁体の最上部や中層部、柱頭や柱礎、開口部の周囲や家具などに用いられる、軽微に凹凸する同じ断面形の細長い装飾。



クリュプタ(crypta、羅〉
教会堂のアプスの下に設けられた聖遺物を祭る部屋。初期の教会堂において聖遺物を安置する墓室(コンフェッシオ)をアプスの下に設けたが、これを参拝するため墓室を囲むアプスの周壁に沿って地下通路が作られた。クリュプタはこれを起源として発達したもので(通路式、坑道式、広間式クリユプタ)、一般に内陣の下に設けられる
が、交差廊の下まで広がったものもあり、12-13世紀まで盛んに建設された・クリュプタは通常堂内に作られるが・内陣に接して堂外に設けられるもの(外クリュプタという)もあった。

クワイア・スクェア(Choir-square)→アンテクワイア

傾斜ヴォールト(Single hipped vault)
二つの起拱点の高さが異なるアーチで作られるヴォールト。

化粧屋根裏(Opentimberwork)
天井を張らずに小屋組や屋根裏を屋内に露出した構造。

外陣(げじん)(Nave)
教会堂において信徒が使用する部分。堂内は一般に二列以上の列柱で区分されるが、内陣や大規模な交差廊も同様に区分される。区分された空間のうち、中央にある主要な空間を身廊nave、それに隣接する補足の空間を側廊aisleと呼ぶ。そこで信徒が使用する部分を、慣用されている身廊部ではなく、外陣と訳すことにより、「身廊部の身廊」のようなまぎらわしい表現を避けることがある。

蹴爪(けづめ)(Angle spur)
ロマネスク建築の円柱の柱礎の
四隅に刻まれた装飾。円形のトルスを方形の礎盤に連結するかのように、鶏の蹴爪、葉、獣の足などの形に刻まれる。

拳葉飾り(Crockct,Kllospe独)
握り拳または芽や蕾のように先端が丸くて突出した装飾。拳華、クロケットともいい、ゴシック建築の柱頭や破風によく用いられた。

交差部(Crossing)
教会堂の主屋の身廊が交差廊と交わる部分。

交差廊(Transept)
トランセプトともいう。内陣と外陣との間に、教会堂の主屋と直交して設けられる空間。交差廊またはその身廊が主屋の身廊と父差する部分(交差部〉とその南北に隣接する部分(袖廊)とで構成される。

小型ギャラリー(Dwarf gallery,Zwerggalerie独,galerie lombarde仏〉
建物の外壁頂部に沿って作られる、コロネードまたはアーケードで屋外に開かれた小さい通路。とくにイタリアとドイツのロマネスク建築でよく用いられた。

小壁付横断アーチ(Diaphragm arch)
身廊や側廊の小屋梁の下または屋根の下面に達する壁体をその上に積み上げた横断アーチ。

小部屋型袖廊(Celluular transept,Ze11enquerhaus)
交差部よりも低いが、側廊よりも高い袖廊。通常この型の袖廊は教会堂の主屋から、南または北の方向へ片流屋根をかける。→交差廊

祭室(Chapelle)
小祭壇を安署する場所、内陣側廊の東端や周歩廊の外周、袖廊の東壁やクリュプタなどに通常小型のアプスとしてつくられるが、多数の信徒を収容できる独立した小教会堂のような規模・形式のものもある。

祭壇域(Presbytery,Altarhaus独)
主祭壇を安置した場所。主祭壇で儀式を執行する司祭の専用する区域で、聖所ともいう。

三塔型西正面(Three towered west front,Dreitrm Westbau独)
三塔を並立した形の西正面。→西構え

三列式内陣(Tripartite choir,dreiteilig Chor独)→三廊式内陣

三廊式内陣(Three naved choir,dreischiffig Chor独)
主祭壇を安置したアプスの両側に列柱をへだてて奥行の深い祭室を一つずつ設けた内陣。アプスと祭室との問が無開口の壁のときは三列式内陣という。これらの祭室はそのほかの祭室と同様に補助的なものだが、ドイツでは脇内陣Nebenchorと呼ぶ。

軸木(じくぎ)くり形→ビリット

支柱交替(Alternating support)→方形平面連結方式

周歩廊付内陣(Choir wit hambulatory)
その外周に歩廊を巡らした内陣。

縮小型西構え(Reduced westwork)
完全な形の西構えVollwcstwerkの一階にある玄関広間を除去し、二階以上の部分を一階に下げたような形の西構え。

スコティア(Scotia)
半楕円形断面にえぐった大きいくり形。

スパンドレル(Spandre1)
アーチの外輪、外輪の起拱点を通る鉛直線および外輪の頂点を通る水平線で囲まれた壁面。

隅切り(Embrasure)
開口部の側壁を、開口部に対して鋭角になるように作ること、または鋭角に作られた側壁。

折面屋根(Folded roof)
半開きの扇子のように、折れ曲った多くの平面を組み合わせたような形の屋根。とくにドイツのロマネスク建築の塔によくみられる。

双塔型西正面(Twin-towered facade)
両端に各一基の塔をそなえた西正面。

袖廊(Transept,Qucrhaus独)

外輪(Extrados)
アーチやヴォールトの外側の線(面)。

玉縁(Bead,Rundstab)
定規縁、アストラガルともいう。高さと奥行がほぽ等しい小さな円形断面のくり形)。

段状内陣(Choir with staggered apses)
大祭壇を安置したアプスの両側にアプスと平行に、アプスから遠ざかるにつれて奥行が逓減する祭室を配置した内陣。ベネディクト修道会のロマネスクの教会堂でよく用いられたので、フランスではこの内陣形式をベネディタト会プラン呼ぶ。

単塔型西正面(Single-towered facade)
一階を教会堂への入口とする一基の塔を中央にそなえた西正面。

単廊式教会堂(Single-naved church)
堂内を無支柱の単一空間とした教会堂。

柱身環(Shaft ring)
円形断面の細長い付柱を太いピアや壁体に連結するかのように、一定の間隔で付柱にとりつけた環状の玉縁。

柱頭(Capital)
柱と梁やアーチなどとの間に配置される部材。



付柱(Engaged column)
壁体やピアに半ば埋めこまれた円柱。一般にその約半分を埋めこんだ形に作られるの
で半円柱ともいうが、実際にはピアや壁体と一体に作られる。

テユンパヌム(tympanum、羅)
出入口上部の梁とその上のアーチとの間の半円形の部分。この部分は通常、薄い壁でふさがれる。

胴蛇腹(String course)
壁面を上下に分節する突出した水平の細い帯状の装飾。

扉口(Portal)
彫刻や彫像などで豊かに装飾された教会堂の入口。

ドラム(Drum)
ドームを支持する円筒状か多角筒状の壁体、または円柱を作るための短い円筒形の部材。

トランセプト→交差廊

トリビューン(Gallery,Empore,tribune仏)
教会堂の二階席。二階桟敷ともいう。一般に側廊の上に設けられ、アーケードにより身廊に開放される。

卜リフォリウム(Triforium)
バシリカ式教会堂において側廊またはトリビューンのアーケードと高窓との間の身廊壁面。ここには盲アーケードやアーケードを作り、身廊壁面を構成する水平層として強調することが多い。

トルス(Torus)
半円形断面の突出した大きいくり形・大玉縁ともいう。

内陣(Choir)
聖職者や修道十が専用する教会堂内の奥まった部分。通常柵や障壁で区画され、大祭壇が安置される。初期キリスト教時代は、身廊の奥に安置された大祭壇とその背後のアプスに設けられたプレスビテリウム(長老席)が内陣であった。その後、大祭壇はアプス中央に移され、その前に方形のスペース(アンテクワイアまたはクワイア・スクェアという)をとってプレスビテリウムとした。9世紀に内陣はさらに拡大され、プレスビテリウムの前に聖職者聖歌隊席が加えられた。典礼上の内陣は聖歌隊席から大祭壇までの身廊をいうが、建築ではその外周の側廊、周歩廊、祭室を含めて内陣と呼ぶ。

西構え(Westwork,Westwerk)
カロワング朝時代に北部の大規模なバシリカ式教会堂において、教会堂の西側に接してつくられた、ほぼ正方形平面で多層構成の西端部。一階には教会堂へ通じる玄関広間、二階には東側を大アーケードで身廊に開放し、そのほかの側をトリビューン付側廊で囲んだ大広間を置く。大広間の上には採光塔または鐘塔を建て、西正面入口の両側に階段塔を作り、大小三基の塔を並立させた雄大で変化にとむ記念的な外観を呈する。10世紀以降、西構えの空間はしだいに解体して木体の教会堂に吸収されるが、西構えが提示した教会堂の入口としての記念性はその後も追求
され、各種の形式の西正面が生み出された。

二重内陣式(Double choired plan)
教会堂の東西両端に一つずつ内陣を設ける形式。束西に交差廊をそなえるものもある。カロリング朝時代からしばしば採用され、とくにドイツ・ロマネスク建築で好まれた。

軒蛇腹(Rafter cornice)
壁体の頂部に壁面から水平に突出して作られる帯状の装飾。古典建築のコーニスに相
当する。

のろ(White wash)
消石灰を水に溶かした乳状の塗装材料。石灰乳、あまともいう。

柱型(Respolld)
アーチやリブや交差ヴォールトの稜線をうけるため、壁体やピアと一体につくられる薄い柱状の突起物。原則として柱頭や柱礎をもたないが、それらをもつものもあり、その場合は付柱や片蓋柱と区別できない。

バシリ力式教会堂(Basilican church)
二列またはそれ以上の列柱で堂内を三っ以上の細長い空間に分け、最も幅が広く天井の高い中央の空間(身廊)の上部に採光用の高窓をそなえた長方形平面の教会堂。一般に短辺の一つに入口、その対向辺に堂外へ突出するアプスを身廊に面して設け、身廊には両流れ屋根、側廊には片流れ屋根をかける。

パストフォリア(pastphoria、希)東方の初期の教会堂において、儀式の準備や供物の収納などのため内陣に設けられた小部屋。

ビリット(Billet)
突出した短い円筒または立方体と平らな面とをたがいちがいにならべたくり形。軸木くり形ともいう。



広間式教会堂(Hall church)
身廊と側廊がほぼ同じ高さで、身廊と側廊を一つの両流れ屋根で覆った形式の教会堂。身廊は側廊の窓と東西壁面にある窓から採光するだけなので、とくにその上部は暗い。

プレスビテリウム(presbyterium、羅)
教会堂の内陣において、大祭壇で儀式を執行する聖職者が専用する部分。イギリスと
ドイツではしばしば内陣(祭壇域)と同義に用いられる。

分離型交差部(Isolated crossing)
教会堂の主屋の身廊と同じ幅と高さの交差廊において、交差部の四周にかけた身廊とほぼ同じ幅と高さのアーチをうけるため、四基のピアにとりつけた片蓋柱や付柱が堂内に目立って突出することのない交差都。分離型は初期ロマネスクで案出された最も完成した交差部で、その後の定型になった。

ベイ(Bay)
建物の内部や外部を垂直方向に分節する単位の区画。隣接する柱と柱、梁と梁、横断アーチと横断アーチとの問にはさまれた部分の平面、壁面、天井面または空間についていう。

ペデスタル(Pedestal)
台座ともいう。円柱、彫像、記念碑などをのせる台.円柱をのせる台は柱台ともいう。
ベネディクト会プラン(plan benedictin、仏)→段状内陣

扁円アーチ(DeprcssedまたはSurbased arch)→弓形アーチ

ペンデンティヴ(Pendentive)
穹隅ともいう、方形の壁体の上にドームを作るため、壁体上部の四隅に
作られる倒立球面三角形の壁体。

方円柱頭(Cube capital)
半球をその大円に内接する正方形の各辺を含む鉛直面で切りとったような、上面
は正方形、下面は円形の柱頭。クッションcushion柱頭、ブロックCube柱頭ともいう。

方形平面連結方式(Bound system)
正方形を基本単位とする教会堂の設計方法の一つ。身廊と側廊の幅の比を2:1とし、身廊の正方形平面の1ベイをその1/4の規模の正方形平面の側廊2ベイと組み合わせる方式。身廊と側廊との聞の列柱は、身廊の正方形ベイの四隅の柱とその中央に配置される柱で構成されるが、後者の柱は側廊の小さなヴォールトを支持するだけなので、前者の柱よりも細く、列柱は太い柱と細い柱が交互に配置されることになる(支柱
交替)。

放射状祭室(chapelles rayonllantes仏)
内陣のアプスの外壁またはその周歩廊の外壁に、アプスの中心から放射する方向に堂外へ突出して作られる祭室。

丸ひだ柱頭(Scalloped capital)

峯(みね)リブ(Ridge rib)
ヴォールトの頭線にとりつけたリブ。

弓形アーチ(Segmental arch)
アーチの高さがその幅の半分以下のアーチ。櫛形、下心または扁円アーチともいう。

ランセット・アーチ(Lancet arch)
アーチの幅より大きい半径の2っの円弧を交差させた鋭い尖頭アーチ。

リブ(Rib)
ヴォールトの内輪に突出して作られるアーチやアーチ状の部材。一般に曲線だが直線のものもある。ヴォールトを補強または装飾する部材で、とくにゴシック建築で盛んに用いられた。

リュネット(Lunette)
大小二つのトンネルヴォールトが交差するとき、大きい方のヴォールトから切り取られる放物線形の部分・半円形の窓や壁(テユンパヌム)もリュネットという。

連結方式
方形平面連結方式の略語。

ロング・クワイア(Longchoir)
身廊に設けられた聖職者聖歌隊席。

脇内陣(Collateralchoir)→三廊式内陣
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