ちょっと似すぎ!?part7



 今回はゴシック建築をゴシック建築たらしめているポインテッドアーチの話です。
建物の様式を判別する時、ポインテッドアーチはその基準となっている重要なエレメントです。またギリシャ・ローマの建築ではポインテッドアーチを使用していなかった為にそれとの対比としてとても分かりやすいので、なにかとポインテッドアーチがゴシック建築に初めて現れたような印象を受けますが、実は違います。ゴッシク建築とロマネスク建築は時期的にはっきりした区分があるわけではなく、12世紀には両者が混在して建てられています。またその時期の分類的にはロマネスク建築とされている建物にもポインテッドアーチが使われています。ポインテッドアーチはゴシック建築の専売特許(?笑)ではないのです。
そこで下の写真です。



建設時期から言うと、C9世紀→B10世紀→A11世紀の順番です。
地域で言うと、Cエジプト→Bフランス→Aイタリアの順番です。

の場合は、開口部ではなく、横断アーチがポインテッドアーチの形状をしています。が、一般的にヨーロッパで最初のポインテッドアーチアーチとグロインド・ヴォールトを使った教会で、修道院長Hughが1080年代にここを訪れた為クリュニー?に影響を与えたのではないかと言われている(Medieval Architecture in Western Europe : From A.D. 300 to 1500)修道院です(*
Basilica Benedettina XI secolo というホームページではこのポーチは12世紀のものとされている!)。そしてが、有名なエジプトのイブン・トゥルーンのモスクです。

分類的に言えばは初期キリスト教建築、Cはイスラム建築です。
見ての通りですが、ポインテッドアーチは別にゴシック建築に始まった訳でも、12世紀になってから使われ始めた訳でもありません。ここでは、Cのトゥルーン朝時代のポインテッドアーチを挙げましたが、イスラム建築では710年頃に建設されたカスル・ハラナで既に見られます。この形態はペルシャが起原ではないかと推測されており、ポインテッドアーチ自体の起原はもっとずっと以前かもしれもせん。
Aについては、Medieval Architecture in Western Europeでも述べられていますが、明らかに北アフリカとシシリーの影響を受けて造られたものです。またBについても、すでに8世紀にアラブがスペインに進出していることから、イスラムスペイン建築から影響をうけたことは、他の箇所で使われている馬蹄形アーチからも明らかです。
(参照→http://notes.romanes.free.fr/images/catalan66/cuxa/texte.htm#。
いずれにしても、西欧の教会堂で使われたポインテッドアーチの起原はイスラム建築に求める他はなさそうです。


S.Angelo in Formis.Capua 1058-75。イタリア。/図版出典:Medieval Architecture in Western Europe : From A.D. 300 to 1500 Oxford University press
サン・ミシェル・ド・キュクサ(Saint-Michel de Cuxa)の修道院教会。身廊の内観。10世紀後期。南フランス。/図版出典:THE EARLY MIDDLE AGES Taschen
イブン・トゥルーンのモスク、フスタート。876年〜879年。エジプト。/図版出典:Islam vol.1 Taschen

関連サイト
Abbaye Saint-Michel de Cuxa (フランス語)
Sant'Angelo in Formis Parrocchia di S. Michele Arcangelo (イタリア語)
Tour of Italy - Sant' Angelo in Formis - 1 (イタリア語)


05/06/03
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