ちょっと似すぎ!? part8
アウグスティノ会の小修道院の洗礼盤−12世紀前期頃
英国のハンプシア州のポートチェスターにある、1130年以降にアウグスティノ会の小修道院として建てられたセント・マリー教会には、注目に値する洗礼盤がある。現在残る教会の建物自体は、そのアーチにノルマン様式のジクザク模様を残す質素な建物であるが、ここにある洗礼盤は、明瞭な連続交差アーチのエレメントで飾られている。 アウグスティノ会の修道院と言えば、以前ちょっと似すぎpart5で取り上げた同じ英国のエセックス州のコルチェスターにある聖ボトルフ小修道院にもやはり外壁に連続交差アーチが使われている。 聖ボトルフ小修道院は、11世紀末に建てられた英国最初のアウグスティノ会の修道院であり、それと同時期のものであると言える。また形態的に、この柱頭の上に載せられた連続交差アーチは同時期のクリューニー小修道院である、キャスル・エーカー小修道院(1080?−1148?)のものにより類似している。 *この時期の修道院にこのようなスペイン・イスラム文化を源とするエレメントが多いのはなぜだろうか?トレドのようなアラビア語からラテン語への翻訳が盛んに行われた12世紀ルネッサンスの拠点に、修道士が勉学に訪れ、そこでスペイン・イスラム文化に触れたのかもしれない?例えば当時の福音書の写本にはイスラム・スペインからの明らかな影響が見られる(下写真)。
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