ちょっと似すぎ!? part12  

多弁アーチのフリーズ化その1

今回ちょっと似すぎpart6で取り上げた多弁アーチの続編。前回アミアン大聖堂のエントランスポーチのポインテッドアーチの内弧面にあるトレーサリーとサラゴサのアルハフェリアの多弁アーチを取り上げたが、英国のハンプシャー州のHartley Maudittの聖レオナール教会(St Leonard's Church)にも、注目すべきアーチがある(下写真)。この教会の南側の入口は、ポインテッドアーチを冠するフレームが囲われているのだが、ノルマン様式特有の犬歯飾りのフードモールディングの下になんと多弁アーチのモールディング(しかも馬蹄形アーチの形状)がある。英国初期ゴシック建築のノルマン様式には、イスラム・スペイン時代の連続交差アーチのモティーフは度々登場するが、多弁アーチしかも馬蹄形のモティーフは殆ど残されていない(筆者が知る限りではこれのみ)。なにやら、イスラム・スペイン時代の多弁アーチのモールディングとしての装飾化を思わせるエレメントである。、、、このエレメントはゴシック建築のアーチのトレーサリーに発展していったのかもしれない。非常に興味深いモティーフである。

、、、、実はこの形態にそっくりなモティーフが、なんと北アフリカのモロッコのラバト(ウダイアのカスバ12世紀末)やマラケシュ(バド・アグナウ Bad Agnaou 12世期末)にある、、、、が、参考としたThe Normans, a European People でもこのエレメントが北アフリカのムワッヒド朝時代のイスラム建築のエレメントにそっくりであることは全く記述されていない、、、不思議だ。
、、、続く。


Hartley Mauditt : St Leonard's Church
犬歯飾りのフードモールディング(繰形)の下に馬蹄形の多弁アーチのモールディング(繰形)があるポインテッドアーチの扉(南側の入口)。12世紀。

Hartley Maudittの聖レオナール教会(St Leonard's Church)の外観。12世紀。

さらに同じハンプシャー州のウィンチフィールド(Winchfield)の聖メアリー教会には、巻き形多弁アーチがある。下図↓
、、、、、ところで
これにそっくりな多弁アーチが、残存しているクリュニー修道院第三聖堂の一部にあるのをご存じだろうか?
クリュニー修道院第三聖堂ではこの多弁アーチ?或いは犬歯アーチは下のコラムの部分まで延長されている、、、、、、、、、
この話は次回に、、、、、、、、


ハンプシャー州のWinchfieldの聖メアリー教会。12世紀。


参考文献:写真出典:
http://www.mondes-normands.caen.fr/angleterre/index.htm

05/11/18//2006/07/30追記
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