visigoths

Visigoth/西ゴート王国

5世紀から8世紀にかけて西ゴート族がフランス南部からイベリア半島にかけて建設したゲルマン部族国家。ドイツ語で Reich der Westgoten 。ゴート族は東ゲルマン人の一派で、発祥地はスカンジナビア半島とされている。のちに南西に移動し、230年ころ黒海北西岸のステップ地帯に定着したが、東西二つの集団に分かれた。

経緯
stage1
バルカン半島からイタリアに入り、アラリック1世(在位395‐410)の時代にローマをはじめ諸都市を略奪。
stage2
アタウルフ王(在位410‐415)の時代、412年にガリアに入って軍駐屯制(ホスピタリタス)と称する独特の(ローマ帝国の)制度のもとにアクイタニア(アキテーヌ)地方に定住。
stage3
テオドリック1世Theodoric I(在位418‐451)、418年アクイタニア地方南部の都市トゥールーズを中心に、ローマ領内でのゲルマン人最初の国家を建設。
stage4
エウリック(在位466‐484)の治世がトゥールーズを拠点とする西ゴート王国の最盛期。アラリック2世 Alaric II(在位484‐507)、アラリック抄典 Breviarium Alaricianum〉を編纂･公布(506)。
stage5
アラリック2世がクロービスの率いるフランク軍に敗れ戦死、王国は崩壊の危機に采したが、東ゴート王国のテオドリック大王の介入によって存続。アラリック2世の遺児アマラリック Amalaric(501‐531)、イベリア半島のカスティリャに移動し、王国の中心はイベリア半島に移る。その後2代にわたって東ゴート人が王に選ばれているが、いずれも暗殺されている。
549年に王位に就いたアギラ Agila(在位549‐555)、ビザンティン軍上陸の脅威を感じて宮廷をメリダに移し、
続いてその後継者アタナギルドAthanagild(在位551，555‐567)はトレドに移転した。これ以後711年の王国滅亡までトレドは王国の中心となった。
stage6
587年レカーレド(在位586‐601)はアリウス派からカトリックに改宗し、ローマ人と西ゴート人の宗教的統一を実現。
レオウィギルド Leovigild(在位568‐586)は半島の西端に建国していたスエビ王国を588年に征服。
シセブート Sisebut(在位612‐621)、バスク地方の分離勢力をが平定。
654年にはレケスウィント Reccesvinth(在位653‐672)王国内に住むすべての住民に適用される領域法Liber judiciorum を発布。
終末
711年ジブラルタル海峡を渡って北アフリカから侵入して来たイスラム教徒の力と時を同じくして各地で勃発した奴隷を含む民衆の反乱の前に王国は一気に崩壊した。

社会
西ゴート社会には法的に、自由人、解放自由人、奴隷の三つの身分が存在。法的には貴族は存在しないが自由人の中に広い領地を所有し高い官職を担った政治的に他に優越した社会層は存在していた。他のゲルマン部族国家と同じく、軍事的に組織された社会で、職業戦士としての従士集団が重要な位置を占めている。従士制度に関してはローマ的なブケラリイ buccellarii制とゲルマン的なサイオネス saiones 制が併存しており、前者では従士は土地と武器の両方を主人から給付されるのに対して、後者では武器しか与えられず従士は主人の家計の中で暮らした。西ゴートの軍隊は、地方支配官である伯 comes によって各地域ごとに徴兵された軍役義務者の集団とティウファドゥス thiuphadus と呼ばれる指揮者が統率する武装隷属民、それに従士軍から成っている。軍隊を直接指揮したのは広域的な行政官であると同時に軍事的権能も掌握する大公 dux であった。
美術
西ゴートの美術はゲルマン人の武具･装身具の金工や西ゴート族が移動の際に接触した東方およびビザンティン文化、地中海沿岸の初期キリスト教美術の影響、イベリア半島土着のケルト･イベリア人の抽象的造形感覚、ローマ支配時代の遺産など様々な要素からなる。
ゴートの教会は人像表現を禁じたので、祭壇(コルドバ)、祭壇障壁(ポーラ･デ･レーナ)、家形墓石は編紐、星、螺旋等の抽象図形で飾られている。キンタニーリャ･デ･ラス･ビニャス聖堂の浮彫やサン･ペドロ･デ･ナーベの柱頭は例外的に人像を表しているが平面的で図式的な扱いは古代ローマ彫刻の写実性からの後退と断絶を示す。

※参考
西ゴート国王の系譜
 西ゴート王国の系図
 東ゴート王国の系図
 (フランク王国)メロビング朝の系図
 (フランク王国)カロリング朝の系図

2006/11/28修正// 07/11/10追記