ちょっと似すぎ!? part13


多弁アーチの起原-帆立貝装飾(スカラップ)/Scalloping(Scallop)
アルアーシク宮殿のニッチの造形に関わる考察 その1


スペインの後ウマイヤ朝、アブド・アッラフマーン三世の時期以降に、マグリブのイスラム建築で多用された建築様式の一つである多弁アーチのルーツを辿ると、知る限り最古の例は、サーマッラーのアーシク宮殿にある。この遺跡は殆ど崩壊しているのだけれど、ここに残る壁面のニッチは本当に様々なヒントを与えてくれる。以前より多弁アーチの形態が一体如何にして形成されたのか?謎であったのだけれど、この遺跡を見ると一目瞭然!見事なスカラップ装飾の端部として多弁アーチが登場している。ニッチにスカラップ装飾を採用する例はローマの神殿にも見られ、例えばバールベク神殿を占領したアラブがそれを建築的に発達させてきたことが想定できる、、、、、が。問題は何故?帆立貝を装飾として受け入れたかである。バールベク神殿はユピテル(ゼウス)の神殿である。そしてそこでの帆立貝の装飾の仕様はウェヌス(ビーナス)がユピテルの娘であることから容易に想像できる(実際にユピテルの神殿の脇にはウェヌスの神殿がある)のだけれど、何故異教の女神を象徴する帆立貝が、、、いや帆立貝だけが建築装飾のモティーフとなっているのだろう?(イスラムの宗旨からいっても動物のモティーフを使用することは原則としてタブーのはずだし、これ以外に多用された例はない)。そして、注意深く観察すれば、何故か帆立貝だけが本当にイスラームの最初期から登場している。エルサレムの岩のドームにもそれと分かる帆立貝のモティーフがモザイク装飾として顕れているし、チュニジアのカイラワーンのモスクのミフラブにもど真ん中に帆立貝がある。さらにコルドバのミフラブの上のドーム、その前のマクスラの上のドームにも帆立貝が散りばめられている、、、等々。挙げればきりの無い程!!これは、一体どうしたことだろう?、、、、、、ビーナス(ウェヌス)信仰の起原にその謎の解決が糸口が、、、、、、、次回に続く

バールベク神殿:エクセドラのニッチ
写真引用:
http://www.nakai.com/2004me/me8.htm
アル・アーシク宮殿:
スカラップ形をした多弁形状をもつニッチ。
引用写真:http://users.ox.ac.uk/~wolf0126/


05/12/17
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